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完成作を山田太一も見届けていた…『異人たち』は「人生に人を招き入れることを語る映画」

映画『異人たち』アンドリュー・ヘイ監督インタビュー

2024/04/19

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 映画

note

話すことでその経験と一緒に生きていけるようになる

 そんなさまざまな思いを込めた作品が、観た人の心にポジティブな何かを与えてくれることを、ヘイ監督は望んでいる。

「これまでに何度も上映会をやってきましたが、終わった後、自分の経験を話したいと、私のところにやってきてくれる人たちがたくさんいました。

 大切な人を失った話だったり、自分のセクシュアリティと葛藤した話だったり、内容はさまざまでしたが、彼らはそのことについて話したいと思ったのです。それは素敵なこと。この映画は、人生に人を招き入れようということを語るのだから。

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©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 この映画を見た人が、辛い体験について誰かに話そうと思ってくれたなら、嬉しい。私たちはもっとコミュニケーションを取るべきです。そうすることによって、その体験と一緒に毎日を生きていけるようになるのですから」

『異人たち』
INTRODUCTION
 昨年亡くなった脚本家・山田太一氏の小説『異人たちとの夏』を原作に、大林宣彦監督が映画化したのが1988年。この名作の35年後に『さざなみ』(15年)、『荒野にて』(17年)のアンドリュー・ヘイ監督がリメイクした。

 死別した両親との邂逅という設定は同じながら主人公のセクシャリティが大きな核となる今作は、現代人の愛や喪失、家族との絆などを描きだす。主人公にはアンドリュー・スコット。恋人にポール・メスカル、両親をジェイミー・ベル、クレア・フォイらの演技派でかため、静謐な画面から感動を呼び起こす作品となった。

STORY
 ロンドンで暮らすアダムは40代の脚本家で、12歳の時に両親を交通事故で亡くし、それ以来喪失感に苛まれ生きてきた。

 ある日アダムが幼少期を過ごした郊外の町を訪れると、中年男性が「うちに来るか?」と語りかけてきた。その男性は30年前にこの世を去ったはずの父だった。

 かつてアダムが住んだ懐かしい家には母の姿もあり、心が満たされる夢のようなひとときを過ごす。それとともに同じマンションに住むハリーと名乗る謎めいた青年と親しくなり恋人となる。

STAFF & CAST
監督・脚本:アンドリュー・ヘイ/原作:山田太一『異人たちとの夏』/出演:アンドリュー・スコット、ポール・メスカル、ジェイミー・ベル、クレア・フォイ/2023年/イギリス/105分/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/4月19日公開

完成作を山田太一も見届けていた…『異人たち』は「人生に人を招き入れることを語る映画」

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