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完成作を山田太一も見届けていた…『異人たち』は「人生に人を招き入れることを語る映画」

映画『異人たち』アンドリュー・ヘイ監督インタビュー

2024/04/19

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 映画

note

「私自身がゲイですし、それは自然な出発点。それに、私は、LGBTの人とその家族の関係について語りたいと以前から思ってきたのです。ヘテロセクシュアルの家族の中で唯一ホモセクシュアルの子供は、どんなことを経験しているのか。

©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 私は、この物語を通して、愛というものの本質を理解しようともしました。恋愛における愛と、家族に対する愛というのは、完全な別物ではなく、絡み合っているものだと思います。この映画は、そこを探索するものです」

新しい恋、突然再会した両親への愛

 アダムはロンドンでひとり暮らしをする脚本家。ある日、同じタワーマンションに住む男性ハリーと出会い、関係を深めていく。

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 そのかたわら、アダムは時々、子供の頃に住んでいた家に出かけ、自分が子供の頃に死んだはずの両親と話すことを楽しむようにもなる。彼の人生には、新しい恋と、突然にして再会できた両親への愛、両方が訪れたのだ。

 アダム役に抜擢されたのは、アンドリュー・スコット(47)。ハリーを演じるのは、「aftersun/アフターサン」で昨年のオスカーにノミネートされたポール・メスカル(28)。

 父の役はジェイミー・ベル(38)、母の役はクレア・フォイ(39)が演じる。

©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

頭の中では時間が簡単に行き来する

 ベルとフォイが初めてスクリーンに登場した時、このふたりがアダムの両親なのだと、すぐには理解できないかもしれない。そのうち飲み込めてくるのだが、そこについてはヘイ監督も最初不安だったと告白する。

「そこをうまくやれなければ、映画は失敗。最悪の、恥ずかしい映画になってしまいます。

 ですが、ある時、頭の中では時間が先にも後ろにも簡単に行き来するのだということに気づいたのですよ。愛する人たちについて考える時、頭に浮かぶのは20年も30年も前の姿だったりするものです。40年も会っていない人とでも、頭の中でなら会話ができる。

 だからこれは(観客が見ても)大丈夫だと、私は信じることにしました」