「殺害された我が子の命の尊さ、殺害した犯人の命の尊さは同じとの考えが頭をよぎるようになりました」

平成凶悪事件と「その後」 平成16年~17年 福岡3女性連続強盗殺人事件篇 第4回

小野 一光 ノンフィクションライター

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ニュース 社会

日本を震撼させた平成の凶悪事件。事件後に流れた歳月は犯人・遺族の心境にどのような変化をもたらすのか。ノンフィクションライター、小野一光氏が現場を歩く。今回は「平成16年~17年 福岡3女性連続強盗殺人事件」篇の第4回(全4回。第1回第2回第3回から読む)。

 2004年12月から05年1月にかけて、福岡県内で3人の女性が強姦や強盗目的で殺害された「福岡3女性殺人事件」。犯人の鈴木泰徳(逮捕時35。19年に死刑執行)は、20歳頃から遊興費のための借金を重ねていた。

 そのきっかけとなったのは、彼が起こした交通事故だったと、裁判での検察側冒頭陳述は述べている。

〈被告人(鈴木)は、平成元年(1989年)ごろ、交通人身事故を起こし、その被害弁済費用を捻出するためなどからサラ金で借金したことを契機に、以来、スナックでの飲み代やパチンコ代等を捻出するため、サラ金からの借金を重ねた結果、合計数百万円の借金を抱えては、父の援助などを得て借金を返済するといったことを繰り返すようになった〉

 鈴木は69年3月生まれであることから、初めて借金をしたのは、成人となった20歳のときであると思われる。福岡県の筑豊地方で、自動車整備工場を経営する実家で育った鈴木は、直方市内の中学校から鞍手郡宮田町(現:宮若市)にある公立の農業高校を経て、自動車関係の専門学校を卒業。04年5月までは実家の整備工場で働いていた。高校時代の同級生によれば、「そんなに目立つタイプではなかった」そうだが、「どうでもないことで、急にキレることがある」性格の持ち主だった。高校時代の別の同級生は言う。

鈴木泰徳©筆者提供

「あいつは直方の繁華街に馴染みの飲み屋が何軒もありました。そこに常連のような顔をして寿司折りとかを持って行き、店では大盤振る舞いをして、女の子の歓心を得たりするんが大好きやったんです。そんな感じやから、友だちやら消費者金融なんかにカネを借りまくっていました。それで借金取りがやってきて、あいつの親父さんが肩代わりしたことが何度もあったと聞いています」

 そんな鈴木は、99年に看護師の女性と結婚する。冒頭陳述には次のようにある。

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