安倍政権、進次郎、原発……すべてを語り尽くした
携帯電話に見知らぬ番号から着信があったのは9月下旬、朝10時過ぎのことだった。うっかり取り損ねた私は、録音された伝言を確認するなり、自分の耳を疑った。
「あ、小泉純一郎です。お手紙拝見しました。その件でちょっとお話ししたいことがありますので、お電話頂ければと思います。しばらくこの電話を空けておきます」
その番号にすぐに掛けた。30秒にも満たないやりとりだけで、単独インタビューの日時と場所は決まった。
私は、10年近く政治家の取材を続ける30代のフリーライターだが、小泉純一郎(73)との面識はない。
学生時代の2001年、小泉旋風に熱狂したものの、就職氷河期で悩み、非正規雇用も経験、規制緩和とグローバル化を謳歌する勝ち組起業家や外資系金融マンを見上げながら格差を実感してきた。「コイズミ」という響きに愛憎相交じる感情を抱くロストジェネレーションの1人である。
東日本大震災では故郷・茨城が大きな被害を受けた。隣接する福島からの北風に怯えた時期もあった。11年夏、私は総理在任中の菅直人と総理公邸で約2時間会い、原発事故について問い質した記録を「週刊朝日」に寄せた。一方、人知れず東北の被災地に慰問を続ける1人の衆院議員に注目するようになった。
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source : 文藝春秋 2016年01月号