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パリ五輪決定のU23日本代表にOA枠は不要? 城彰二が考えるオーバーエイジ選出の“デメリット”「選手のメンタルが削がれてしまう」

2024/05/01
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 4月29日、サッカー男子23歳以下によるアジア地域の国別対抗戦兼パリオリンピック最終予選「AFC U23アジアカップ2024」の準決勝が行われ、U-23日本代表がイラクを2-0で撃破。8大会連続のオリンピック出場を決めた。

 元日本代表で、現在はサッカー解説者として活躍する城彰二氏は、U-23日本代表の戦いぶりをどう見たのか。話を聞いた。

パリオリンピック出場を決めたU-23日本代表 ©時事通信社

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イラク戦は今大会で一番の出来だった

――準決勝でイラクに2-0で勝利し、8大会連続での五輪出場を決めました。

城彰二さん(以下、城) アトランタ五輪の時に28年ぶりに出場権を獲得して以来、それを途切れさせないというのは、相当プレッシャーがあったと思います。しかも今、アジアで勝ち抜くのは思っている以上に簡単ではないので、ここまでよく我慢して勝ち上がってきた。パリ五輪の出場権を獲得したイラク戦は、今大会で一番の出来で、本当に良かったと思います。

――イラク戦、日本の何が良かったのでしょうか。

 イラクがもう少し攻撃的に来るのかなと思ったけど、5バックにして、まさかあそこまで守備的に構えてくるとは思わなかった。でも、それが日本にとっては逆に良かったですね。

 中盤では相手が2枚に対して日本は松木(玖生)と荒木(遼太郎)と藤田(譲瑠チマ)の3人がいて、藤田が1人余った状態でフリーでプレーしていた。相手のプレッシャーがなく、余裕があったので、韓国戦とは異なり、縦パスを入れることができた。縦にパスを入れて、相手が絞ったところでサイドに展開するとか、攻撃のバリエーションを増やせたことで相手は対応に四苦八苦していた。

――前半28分、今大会、準々決勝のカタール戦まで得点が奪えずに苦しんだ細谷真大選手が先制点を決めました。

 藤田から縦パスを受けて決めたけど、ボールを受けたまま左足でシュートを打ったら入っていなかった。でも、そこで反転して右足でズドンですからね。あれだけ落ち着いて、周囲が見えていたのは、やっぱりカタール戦で決めて、気持ちに余裕ができたからだと思う。

 FWは、点をとらなきゃいけないというプレッシャーが常にあるし、1点取るまでは精神的に解放されないんです。でも、もっと点を取ってほしい。イラク戦もまだチャンスがあったし、ウズベキスタンとの決勝戦でも決めてほしいですね。

パリオリンピックの出場権を獲得できた要因

――細谷選手のゴール、そして荒木遼太郎選手のゴールをアシストしたのが藤田選手でした。縦パスが見事でしたし、セカンドボールも回収して、非常にプレーが目立ちました。

 藤田は、このゲームのMVPでしょう。細谷へのアシストはピンポイントのパスだったし、荒木へのアシストも速いパスをワンタッチで出した。2本のパスの精度がすごく高かったし、セカンドボールをほぼ制圧。ボールキープができて、対人守備も強い。この年代では、レベルの違いを見せつけた感があって、彼が中心のチームだなって改めて思いました。