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未解決事件を追う

「時間つぶし」と称して15歳少女に性的暴行…見ず知らずの一家4人を惨殺した「史上最悪の少年犯罪」死刑囚の告白

「時間つぶし」と称して15歳少女に性的暴行…見ず知らずの一家4人を惨殺した「史上最悪の少年犯罪」死刑囚の告白

市川一家4人殺害事件

2024/05/02

genre : ニュース, 社会

note

 1992年に発生した、史上最悪の少年犯罪――犯人は当時19歳の少年で、見ず知らずの一家4人を一夜にして殺害した。少年はなぜ凶行に走ったのか? 死刑確定までの3年余り、犯人と対話を重ねた作家・永瀬隼介さんが事件をふりかえる。

◆◆◆

 鋏(はさみ)で封を切る。ん? なんだ、この匂いは――真っ白な封筒から薄青色の便箋を抜き出し、嗅いでみる。香水だ。獄中の男から届いた最初の手紙には、上等の香水がたっぷり振りかけてあった。

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 男の名前は関光彦(せきてるひこ)。1992年3月6日、19歳時に千葉県市川市のマンションに押し入り、4歳の幼女、両親、83歳の祖母の一家4人をなぶるようにして惨殺。その遺体の傍らで、ひとり生き残った長女(15歳)を「気分転換、時間潰し」と称し、強姦している。まさに鬼畜の所業である。

©AFLO

「あんな殺人犯は見たことがない」

 一夜で4人の命を、虫をひねり潰すがごとく奪った光彦は、逮捕後もその冷酷ぶりを遺憾なく発揮し、取り調べに当たったベテラン刑事を唖然とさせた。

「あんな殺人犯は見たことがない。三度のメシを腹いっぱい食い、夜は大いびきをかいて熟睡している。人間じゃありませんよ」

 面会に訪れた母親には、高校時代の教科書と参考書を差し入れさせている。出所後に備え、資格のひとつも取得しようと考えたのだ。

 未成年だから死刑は無いだろう、少年院で罪を償い、また出直せばいい、とその程度の罪の意識だった。

 しかし、地裁、高裁、共に死刑判決を下し、2001年12月3日、最高裁は上告を棄却して死刑が確定した。

 わたしは死刑確定までの3年余り、葛飾区小菅の東京拘置所に通ってインタビューを重ね、手紙を交わし、被害者遺族をはじめ多くの関係者の証言を得て、拙著『19歳 一家四人惨殺犯の告白』(角川文庫)にまとめた。

暴力に彩られた半生

 手紙に香水を振り撒く“配慮”と、酸鼻(さんび)を極めた大量殺人との落差に眩暈(めまい)がする思いだったが、光彦の複雑極まりない素顔と、暴力に彩られた半生を知るにつけ、違和感は薄らいでいった。

〈僕は高校も中退してしまい、(中略)ひどく無学でたいしたことも書けません。稚拙な文章になり、要領を得ない通信になるかと思います〉