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「うーむ。そう来たか…」前立腺がんホルモン治療で「陰部」「乳房」のサイズが激変した《闘病中ジャーナリストが告白》

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僕の前立腺がんレポート

2024/01/27

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ライフ, 医療

note

「シモの世話」に備えて……前例なき包茎手術

 次に変化を感じたのはその半年ほどあとのこと。

 腕組みして遠くを睨んでいるうちに、陰茎が小さくなってきたのだ。

 そもそもホルモン治療を始めると性欲が減退するし、僕は前立腺を全摘しているので勃起神経も切っている。発情もしなければ勃起もしない。

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 当然、女性とどうこうなることもないのであまり気にしていなかったのだが、気付いてからというもの、勢いを増して小さくなってしまった。

 陰茎という器官は、本体の周囲に包皮があり、子どものうちは陰茎全体が包皮に覆われているのだが、成長するにつれて本体が大きくなるので包皮から顔を出すようになる。ところが顔を出さない陰茎もあって、これを世間では「包茎」と呼ぶ。包茎自体は病気ではないのだが、世間の評価は芳しくなく、タートルネックで顔を半分隠した人の広告を掲出するクリニックに行って手術をしてもらう人も少なくない。

 僕の“一つ目小僧”は一応顔が出ていたので、これをもってうしろ指を指されることはなかったのだが、ホルモン治療によって本体が小さくなったことで包皮に余剰が生じ、結果として包茎になってしまったのだ。

 ウルトラ警備隊が所有する地底戦車「マグマライザー」の先端ドリルのようになってしまったわがマイクロペニス1号から、往時の活躍を偲ぶのはもはや困難だ。

 このことを主治医の小路医師に相談したことがある。

「将来誰かにシモの世話をしてもらうようになった時、マグマライザーでは恥ずかしいので、タートルネッククリニックに行こうかと思うのですが……」

 小路医師は「初めてそのような相談を受けました」と驚き、こう言ってくれた。

「もし必要があれば私が手術しますよ。久しぶりですが」

 聞けば仮性包茎の手術は自由診療だが、真性包茎の手術は健康保険が利くという。僕の場合は中身があまりにも小さくなったうえに勃起もしないので、「真性包茎のようなもの」という扱いで、大学病院でも手術ができるというのだ。とても稀なことだそうだが……。

 小路医師に手術してもらえるなら安心だ。いますぐに、というわけではないので、その時期が来たらお願いすることになっている。

「マグマライザー」は、いまでも模型が発売されるほど人気。(写真は、フジミ模型「地球防衛軍ウルトラ警備隊マグマライザー TDF MRI」)

 新宿二丁目のおかまバーがつぶれる前、ヒゲを生やしたママに「包茎手術を受けるかもしれない」と話したら、

「アハハ。や~だ~。いまさら?」

 と笑われた。

「誤解だ。前から包茎だったわけではなく、いま突然包茎になったんだ!」

 と弁解しても、

「や~だ~。アハハ!」

 と笑うだけ笑い、

「ワインいただくわね」

 と、話の内容に関係なく勝手にワインをグラスに注いで飲み干しては、「やだわ~」などと言いながら僕の伝票に「正」の字の線を書き足していく。嫌なのはこっちだ。

 人の悩みを笑ったりするといずれ罰が当たるぞ――と思っていたら、ほどなく店は潰れたのだった。